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2023/04/13

伊賀の新しい特産品で農地を守る【ネットワーク東海3月4週号】

「伊賀の厳しい寒さで育てた新しい特産品で地域の農業を守りたい」と話すのは、伊賀市槙山で園芸資材を生産販売する株式会社秋本天産物の取締役会長 秋本 順次(アキモト ジュンジ)さん(73)。

伊賀忍者で知られる伊賀市が認定する地場産品「IGAMONO(いがもの)」へ令和4年度に登録された「伊賀の芭蕉ねぎ」の仕掛人だ。

伊賀市槙山地区の人口は約500人。約60㌶の田のうち、10㌶はすでに耕作放棄地となっており、残りの耕地も農家の高齢化とともに減少傾向にあった。

地域の農業の衰退に危機感を感じた秋本さん。「今農業を続けているのは、我々団塊の世代。年々体力的に厳しくなるし、若者は農業をやらない。このままでは地域の農業は衰退していく一方だ」との思いから利益率の高い地域ブランド品の確立を計画した。

「伊賀には伊賀牛や伊賀米などの特産品があるので野菜の特産品も作りたかった」という秋本さんが目を付けたのが白ネギ。

コメの収穫が終わった秋から春にかけてが収穫のピークになるため、農閑期を有効利用できることと、大型機械などの初期投資を必要とせず露地栽培できるのがポイントだった。

また、隣の滋賀県近江八幡市では「安土信長葱」、甲賀市には「忍葱」がブランド化され、1本あたりの単価も市販品の約3倍で売れていることも後押しとなった。

実際に秋本さんが白ネギを栽培してみたところ、太さも食味も申し分なかったという。「この地域の冬は『伊賀の底冷え』と言われるほど寒さが厳しくなるが、この寒さが野菜に甘みを与えてくれる。ネギは自分自身が寒さで凍ってしまわないよう自ら糖度を上げて身を守る」

自信を持った秋本さんは、平成30年から地元のJAいがふるさとと連携し、本格的に作付けをスタートさせた。名称は地元出身の俳聖・松尾芭蕉に因んで「芭蕉ねぎ」と名付けた。

令和2年9月には、JAいがふるさと、ねぎの選果・加工を行う伊賀市の自立支援施設「NPO法人えん」と共に3者で「伊賀の芭蕉ねぎ」の商標登録を取得した。

当初は秋本天産物一社で始めた栽培農家も今は30名ほどになり、面積も5㌶と当初の6倍にまで拡大した。

秋本さんは「若い人達が農業をやりたがらないのは、農業が儲からないというイメージを持っているからではないか。農業はやり方次第で収入を上げることができる。芭蕉ねぎは10㎝間隔で植えれば10㌃あたり1万7500本植えることができる。1本平均80円で売れれば100万円以上の収入になる。通常の白ネギとして売っていたのではこうはいかない。ブランド品を確立するのは大事なことだ」と語る。

 

「今後の課題」

今後の課題は生産規模の拡大とそのための耕地整理だと話す秋本さん。

槙山地区は、昔ながらの小さい圃場が多く、畦草の管理だけでも大変な労力になる。作業効率を向上しなければ新規就農しても長く続けるのは難しい。

秋本さんは「今、国の農地中間管理機構関連農地整備事業への申請を計画している。申請が認められれば、槙山地区が費用を負担せずに耕地整理ができる。これまで行政と地域住民で話合いを重ねており、来年には国へ申請する予定。この地域の農業に光をあて、次の世代へ引き継ぐことが自分の仕事だと思っている」と話した。

 

「伊賀市は大阪や京都などの大きなマーケットまで1時間で行ける良い立地。何としても特産品を作りたかった」と話す秋本会長

伊賀の芭蕉ねぎ」。甘味とトロっとした
食感が特徴。牛肉との相性がよく、すき焼きや鍋料理などがおすすめ

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