広報印刷物
最新情報をお届け
2025/11/05
驚きで笑顔になる味が魅力【ネットワーク東海10月4週号】
驚きで笑顔になる味が魅力/山出陽介さん・南伊勢町
県南部の温暖な気候と海・山の自然に恵まれた南伊勢町内瀬(ないぜ)で「やまで農園」を営む山出陽介さん(46)は〝感動してもらえる農産物〟を目指し、多品目の果樹栽培に取り組んでいる。
現在、アテモヤ2㌃、ミカン1.5㌶、小梅(五ケ所小梅)30㌃などを手がける。祖父の代から続く農園を30歳で継ぎ、ミカンや五ケ所小梅に加えて力を入れてきたのがアテモヤの栽培だ。アテモヤ(Atemoya)は、バンレイシ(ブラジル名はAte)と、世界三大美果の一つチェリモヤ(Cherimoya)の交配種。糖度は20~25度と甘く、クリーミーな味わいで「森のアイスクリーム」とも呼ばれている。
アテモヤとの出合いは、ミカンの研修で訪れた三重県農業研究所紀南果樹研究室。新品種を増やそうと考えていた矢先で、山出さんは「初めて口にした時の感動は忘れられない。食べた人が驚いて笑顔になるのもうれしい」と話す。
濃厚な甘さと独特の香りが魅力的だが、栽培に手間がかかる。特に受粉作業は容易ではない。雄しべが花粉を放つ雄性期の翌日に、成熟した雌しべが花粉を受け取れる雌性期を迎えるため、自然受粉ではほとんど実を結ばない。そのため、夜に雄性期の花から花粉を採取し、翌日の夜に雌性期の花に一つ一つ人工授粉していく。タイミングを逃すと着果しないため、手作業での根気強い対応が不可欠だ。
山出さんは「ゴツゴツした見た目からは想像できないおいしさを将来に残していきたい。栽培技術も伝えていきたい」と話す。「里の駅 ないぜしぜん村」も経営。ミカン狩り体験、特産物の販売、手作りジュースの販売を行う。今後は栽培・加工・販売まで一貫して行い、自社製品を増やし「人が集まる場所」にする構想も描く。