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農業共済新聞

匠を目指して精進 【ネットワーク東海2月1週号】

2017-02-17

 「匠と言われるような肥育農家を目指したい。そのためには日々勉強だよ」と話すのは、三重ブランドの代表格松阪牛を飼育する西口正広さん(55)。三重県松阪市にある標高240㍍の高台で黒毛和種180頭を飼育している。

「松阪牛は、きめ細かいサシ(霜降り)や柔らかな肉質に加え、甘く上品な香りがする。ぜひ味わってほしい」と話す西口さん

 「牛は夏場には食欲が落ちるけど、この牛舎は30℃を超えないのでしっかり食べてくれる。町の騒音も無いし、いい環境だよ」と話す西口さんだが、松阪牛肥育農家としてはまだ6年目。自身でも「まだまだ素人同然。失敗も多いよ」と笑う。

 一級建築士の資格を持ち、建築関係の仕事に携わっていた西口さんが松阪牛肥育農家になると決意したのは2005年。父の代から所有していた36㌶の山の一部を自ら開発し08年には牧場を完成させた。畜産も独自で学び、当初の繁殖肥育一貫経営から、11年には肥育経営へ切り替えた。

 西口さんが重要視するのが、日々変わる牛の状態を注意深く観察することだ。朝夕の畜舎掃除の際には牛の状態を一頭ずつしっかり確認する。成牛では1日約10㌔のエサを食べるが、食欲が無い牛はすぐに体温を測り熱が無いか確認する。自分では処置が難しいと感じたらすぐに獣医に診てもらい大事に至らないようにする。

 飼育方法について、今一番頭を悩ませているのが、素牛(子牛)の価格高騰だという。「ここ数年で、2倍になっている。年間約100頭導入しているので、本当に良い牛を厳選しないといけない」と話す。

 導入する牛の半数はJAに購入を依頼しているが、残りは自分が家畜市場で購入している。購入する基準は「腹がどっしりとして体格のいい牛」だ。「腹がどっしりとしているのは、子牛の時からわらなどをよく食べさせ、胃が鍛えられている証拠。そのような牛は成長してからも栄養の多い濃厚飼料をよく食べてくれる」という。松阪牛の肉の特長であり、味の決め手となるきめ細かいサシ(霜降り)は濃厚飼料と呼ばれる穀類や粕類などのブレンドが重要なカギであり、肥育農家の腕の見せどころでもある。

 14年には目標だった松阪肉牛共進会への出場も果たした。「松阪牛を飼育する者なら誰もが憧れる共進会へ出場がかなった。友人にそのことを報告している時に、うれしさのあまり涙がでたね」と当時を振り返る。

第67回松阪肉牛共進会優秀賞第五席を獲得した「あつこ」号と西口さん

 そして2回目の出場を果たした昨年11月の第67回松阪肉牛共進会では、西口さんの育てた「あつこ」号が、その年の特選松阪牛の中で5本の指に入る優秀賞五席を獲得した。

 「導入した時から落ち着いた牛でエサもよく食べた。自分でも良い牛に育ってくれたと思う」と自慢の牛だったが、「最終選考に残ったときは震えた。受賞できたのは運もあるし牛の力もある。とにかくうれしかったし何より楽しかった。色々教えてくれた先輩農家や支えてくれた家族に感謝したい」と話す。

 昨年からは念願だった東京への出荷も開始した。「松阪牛は海外でも人気が高い世界的なブランド。その名に恥じない良い牛を育てたい。そして多くの人に自分の育てた松阪牛を食べてほしい」と抱負を語った。

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