NOSAI三重は「信頼のきずな」で農家・地域の未来を支える活動をしています。

  • 文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

農業共済新聞

伝統の味を後世へ 【ネットワーク東海12月2週号】

2015-12-09

 「まろやかな甘さととろける果肉。伊勢の蓮台寺柿を食べてみてください」と話すのは、JA伊勢蓮台寺柿部会の山添久憲部会長(69)と大西信孝副部会長(66)。古い歴史と伝統を持つ蓮台寺柿は伊勢志摩地域だけでなく、県外でも人気となっている。

「品質やブランドを守るためには一年を通しての園地管理が必要です」と話す山添部会長㊧と大西副部会長

 蓮台寺柿は、約1200年前に空海が諸国をめぐって伊勢を訪れた時、この柿を大変気に入ったと伝えられている。江戸時代に神宮祭主が建立したとされる蓮台寺の名にちなんで、この地で栽培される柿を蓮台寺柿と呼ぶようになった。1958年には市の天然記念物にも指定されている。

 蓮台寺柿は渋柿の一種で収穫後丸1日、二酸化炭素による脱渋処理を行い選果場へ出荷される。特徴はとろりとした果肉の食感と蜜のような甘さ。11月半ばの収穫期には糖度18%にもなるが、収穫期初めの9月末に収穫した青みがかった果実でも十分な甘さがあり、その独特の風味を好む人も多い。

 現在の蓮台寺柿部会の生産者は54人で、年間約200㌧を出荷、蓮台寺柿共同選果場の統一した基準で品質の維持に取り組んでいる。

形や傷をみて2種類の等級に分ける選果場の女性達

 本年産は天候に恵まれ果形も良く、糖度も高いという。おいしい柿の選び方について大西さんは「色が濃く見た目もいい果実は、実際に味もいい。採れたてのコリコリした食感もおいしいけど、熟してとろとろになった柿も格別。この熟した柿を冷凍しておくと最高のシャーベットになる」と笑顔で話す。

 期間限定で蓮台寺柿を使った干し柿「ひなたやけ」も、伊勢神宮内宮前のおかげ横丁やスーパーなどで販売されている。通常の干し柿と違い皮をむいて四つ切りにし、オレンジ色の実が飴色になるまで乾燥と揉み込みを繰り返す。こうすることで、生果とは違うもっちりとした食感と上品な甘さのドライフルーツに変身する。ビタミンや食物繊維なども多く含まれ、健康食品としても注目を集めている。

冬季限定の「ひなたやけ」㊧。そのままでも炙ってもおいしい

 現在の悩みは大量生産できないことだという。「二酸化炭素を使う脱渋処理は農家個人で行うのが基本なので、その日に処理を行える量しか収穫できない。収穫適期だからといって、一気に採ることができない」と山添さんは話す。またこの脱渋処理を行うことで軟化が早くなり、保存期間が短くなってしまうという。現在、保存方法について県の普及所とも研究を重ねている。

 蓮台寺柿の収穫時期は9月末から11月下旬と通常の柿よりも長いのが特徴。この長所を活かし、より多くの人に蓮台寺柿を届けたいと語る山添部会長。近年はゆうパックで柿を送れるよう郵便局と提携し、年間約8㌧を全国に発送している。今後の目標について山添さんは「皆がおいしいと言ってくれる柿を作るのが生産者全員の願い。伊勢の蓮台寺柿の伝統を守り後世まで伝えたい」と話す。

干し柿「ひなたやけ」作成の様子。専用の機械で皮を剥く

四つ切にした後5日間乾燥と揉み込みを繰り返す

ページトップ